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自閉スペクトラム症(アスペルガー障害も含む)

札幌市近郊恵庭市の臨床心理士/公認心理師によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。

今回は自閉スペクトラム症(アスペルガー障害も含む)について、皆様と考えていきたいと思います。

私がこの自閉スペクトラム症について、その名前を知ったのは大学学部の時です。
この分野では有名な竹田契一先生(現大阪医科大学LDセンター)のご講義で、この名前を聞きました。
竹田契一先生の講義では、実際にアスペルガー障害の青年に講義に来ていただき、直接質問する機会を与えてもらいました。
彼はIQ150の天才ですが、それでも「何が一番好きですか?」のようなたくさんあるものの中から一番を探すことなどが出来ず、生活面での困りごとがたくさんありました。
こだわりも多く、日々通常発達の文化を学びながら、適応されている様子でした。
これはこちら通常発達の者も、自閉スペクトラム症(アスペルガー障害も含む)の人々の文化について学ぶ必要があるな、と感じさせる出会いでした。

さて、前置きが長くなりましたが、自閉スペクトラム症(アスペルガー障害も含む)がどんなものかについてみていきたいと思います。
まず「自閉スペクトラム症」ということばに馴染みのない方も多いと思います。
どちらかというとアスペルガー障害の方が馴染みがあるかもしれませんね。
「自閉スペクトラム症」とは、アスペルガー障害も含んだ概念で、典型的な自閉症に加えアスペルガー障害や、特定不能の広汎性発達障害を含んだ概念となっています。
これら典型的な自閉症、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害を別々の障害として考えるのではなく、虹のように様々な色が含まれる一つの集合体としてとらえようとするのが、「自閉スペクトラム症」なのです。

この自閉スペクトラム症は割合でいうと、子どものおよそ20人~50人に1人がこの障害だと言われています。
かなり高確率ですよね。小学校のクラス、2クラスに1人はいる計算になるでしょうか。

自閉スペクトラム症が疑われる子どもの一例をみてみましょう。

1)視線が合わないか、合っても共感的でない
2)表情が乏しい、または不自然
3)名前を呼んでも振り向かない
4)人見知りをしない、親の後追いをしない
5)独り言が多い、オウム返しがある
6)親が「みてごらん」と指さしてもなかなかそちらを見ない
7)抱っこや触られるのを嫌がる
8)一人遊びが多い、ごっこ遊びを好まない
9)食べ物の好き嫌いが激しい
10)欲しいものを「あれとって」と言葉や身振りで伝えずに、親の手をつかんで連れて行って示す

赤ちゃんの時には抱っこをしても嫌がって身体をそらすなどの行動がみられ、指差しがみられるのが遅くなる傾向にあります。
自分の指差しだけでなく、大人の指差しの方向を見ることも苦手で、出来るのが遅くなる傾向があります。
お母さんが気付きだすのは、公園で遊んでいる時などに友達と遊ばず、一人で車を並べて遊んでいたり、ごっこ遊びに発展しないことがきっかけになることが多いようです。
私が児童相談所に勤めていた時には、そのために3歳児健診で指摘され、精密検査に来られるパターンが多かったように思います。
お母さんたちは「私たちの育て方が悪かったのか…」とご自分を責めがちですが、これは生まれつきの脳機能の異常によるもので、育て方の問題ではありません。

自閉スペクトラム症の症状には主に3つ組と呼ばれる症状があります。それについてみてみましょう。

「社会性」
同年代の他者と相互的な交流を行うことが困難という特性です。
幼児期には他者の存在への無関心、人より物への興味の強さで表現されることが多いです。
学童期以降には、親密で対等の関係を友人と構築することの困難さが特徴です。
ただし、社会性が発達しないわけではありません。
ゆっくりと発達し、徐々に変化していきます。
特に知的に高い人たちは、これまでの経験をもとに自分で特性が目立たないようにカバーしている人も少なくありません。

この社会性の障害では、特に小学校高学年以降に同性の友人と親密な親しい関係を作っていくことにおいてつまずきがみられることが多いです。
本人が親密な関係を欲していながら、親密な関係を築けない場合と、本人がそもそも親密な関係を欲していない場合とに分かれます。
本人がそもそも親密な関係を欲していない場合は無理に友達付き合いを強要せずに、本人のペースで生活できればよいものと思います。
しかし本人が親密な関係を欲しているが築けない場合は、
「友達の輪にどうやって入ったらよいか分からない」「最初のとっかかりの会話をどうしたらよいか分からない」という悩みが寄せられることが多いので、
そのことについて専門家と相談することが必要になってくるものと思われます。
当相談室でもこのような相談を多く受けております。

「社会的コミュニケーション」
自閉スペクトラム症の人は社会的場面でのコミュニケーションの方法が独特です。
例えば一見流暢に話し、専門用語や四文字熟語などを多用する人でも、意味を充分に理解せずに使用していることがあります。
音程や抑揚、早さ、リズムに偏りがあり、話し方が単調であったり、自分の好みのことを一方的に話し続けることや、
相手の言葉をそのまま繰り返してしまうこともあります。
また言葉を字義どおりに受け取ってしまう、言葉の裏を読むことが苦手、相手の発した言葉の中で、自分の気になった部分のみに着目してしまうという面も見られます。

「社会的イマジネーション」
物を並べる、特定の物を集める、変化を嫌う(同じ行動を繰り返す)などの‘こだわり’と言われる行動がみられます。
次に起こることを想像することが難しく、自分なりに見通しをもつことが出来ないため、同じパターンを繰り返し行うことで安心しやすいのだと言われています。
また、自分の好みのものを集めることや揃えることを好んだり、せっかく集めても、それを本来の目的ではなく、ただ収集することだけで満足することもあります。
これは自閉スペクトラム症の人で良くみられる‘ゲームにはまる’ことと無関係ではありません。
ゲームの世界は、何度も繰り返して遊べる同じ場面が繰り返して現れるため、自閉スペクトラム症の人にとっては安全・安心な世界です。
そのゲームにはまってしまって、なかなかやめられなくなる、という傾向がみられます。
これには、ゲームの時間を決めて、ゲームを終える10分前に一度アラームを鳴らし、ゲームを終える時に再度アラームを鳴らすなどの工夫が必要になります。
そしてゲームはこの傾向の人にとって安心・安全な世界だということを、しっかり理解した上で、遊べる時間をしっかり確保してあげることも必要でしょう。
割合自閉スペクトラム症の人でも軽い人の場合、〇〇コレクションとして物を集めることが好きだった、という意見も聞かれます。

以上が3つ組です。

この3つ組に加え感覚の偏りがみられます
音に関して非常に敏感で、トイレの流れる音などが恐怖であったりする一方で、別の音には鈍感である、などがみられます。
触覚に関しても、人から触られることを嫌がったり、軽く触られただけでも叩かれたように感じる人もいます。
それに対して特定の感覚刺激を好む場合もあります。
味覚も味や温度、柔らかさ、舌触りなどに過敏であり、偏食がみられることもあります。
この感覚の偏りについては、無理させないことが大切です。
嫌がる食べ物を無理やり食べさせたり、音を我慢させることは、本人にとってはひどく苦痛です。
この苦痛から2次障害(2次的に精神疾患が現れる障害)に陥る場合もあります。
これは自閉スペクトラム症の人たちの文化だと考えることが大切です。
また不安・緊張が強い時に、感覚の偏りがひどくなる場合があります。
感覚の偏りが見られたら、普段の生活で無理がかかっていないか、確認する必要があります。

以上が自閉スペクトラム症(アスペルガー障害も含む)の人の特徴とその対応です。
対応として紹介したのは、療育、SSTといわれているものの一部です。
療育、SSTは当相談室でも多く受けております。

自閉スペクトラム症の人たちが、我々通常発達の人の文化に合わせてくれている部分もたくさんあると思います。
そのため我々も自閉スペクトラム症の人たちの文化を学んで、歩み寄る必要があるように思います。

自閉スペクトラム症の人たちがより過ごしやすい世界になりますように。

→予約

なおこ心理相談室
臨床心理士/公認心理師 足立直子

 

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