札幌市近郊恵庭市の公認心理師／臨床心理士によるカウンセリングルームです。 対象地域：札幌市・千歳市・恵庭市・北広島市・江別市・苫小牧市

皆様、こんにちは。

 

札幌市近郊恵庭市のカウンセリングルーム「なおこ心理相談室 」の臨床心理士の足立直子です。

 

今日の恵庭は晴れています。
でも外はとても冷えています。
もうすぐ雪が降るでしょうか。
風邪を引いている方もおられるでしょう。
どうぞお大事になさってくださいね。

 

さて、今日は、

自閉症スペクトラム障がいをもつ人が苦手としやすい場面はどんな場面か、そしてその場面を上手くやり抜くには、
どんな手段が有効か、ということを皆様と考えてみたいと思います。

 

実は、上記は私の修士課程の時の論文のテーマでもありました。ですので、今回は、その一部をご紹介したいと思います。
自閉症スペクトラム障がいをもつ人たちは、コミュニケーションに障がいがあると同時に、
コミュニケーションに直接かかわらない実行機能（複雑な課題の遂行に際して、課題ルールの維持や情報の更新などを行うことで、思考や行動を制御する認知システム。
新しい行動パターンの促進や非慣習的な状況における行動の最適化に重要な役割を果たし、人間の目標志向的な行動を支えているとされる。これは脳の前頭前野に由来すると考えられている）
にも難しさを抱えていると言われています。

 

上記の説明では、どんな場面が苦手になるか、よく分かりませんね。

次に、具体的に記しますね。

自閉症スペクトラム障がい（アスペルガー障がいを含む）の人たちが、困ってしまう場面は、以下のような場面が多いと考えられています。

平均年齢11歳の場合ですが、以下の３点について特に「ドキドキする気持ち」が大きく起こり、困惑することが多いという結果になりました。

・頑張ることを期待されている時

・試される場面

・時間的切迫場面（時間に余裕がない時）

どの場面も通常の発達の子どもたちでもストレスになる場面だとは思いますが、
自閉症スペクトラム障がいをもつ子どもの場合、より困惑度が増し、場合によってはパニックに陥ってしまうこともあります。

この３点が困惑する場面である理由には、いくつもの理由が複合的に絡み合っていると思いますが、

「力を試されている時」は、「勝つことへのこだわり」が大きく関係して、「勝たなければ！」という思いが強くなることから、平常心ではいられなくなりやすいと思われます。

「時間に余裕がない時」は、自閉症スペクトラム障がいの人の特徴の一つで、「物事の見通しを立てることが苦手」という特徴があるため、
一つの場面でつまづいてしまうと、パニックに陥りやすくなるものと思われます。
そのため、例えば、特に手先の器用さが試されるような靴ひもを結ぶような時には、よりゆっくりとした時間を用意して練習させてあげた方が良いでしょう。
学校に遅れそうな時に紐靴を用意すると、混乱が大きくなってしまいがちです。

さて、では、苦手な場面をうまくやり抜く方法を身につけるには、どうしたらいいでしょうか。

これは、一つの方法に限りませんので、試行錯誤しながら見つけていくことも大事かと思います。

私が試した方法で、有効であったのは、以下の方法です。

「寝坊して遅刻しそうになったとき」
「先生にあてられたけれど、答えが分からない時」
「テストが難しすぎて分からない時」

…など、子どもたちが「困ったな」と思うような場面を４５場面選び、絵カードにしました。

そしてその中から、一番苦手な場面を自閉症スペクトラムのあるお子さんに選んでもらい、

「いつもはどうしているか」
「今から振り返ったら、どうするのがベストと思うか」と話し合い、「では、次に○○の場面になったら、△△してみよう」と決めます。

保護者の方にもそのことをお伝えし、一日の終わりに「今日はどうだったかな？」と振り返ってもらいます。

これを1カ月続けてもらいました。

すると、ほとんどの子どもにおいて、一番苦手であった場面について、やり抜く方法が身についていました。

1か月という期間も、これ以上長すぎると、この課題自体がこだわりになってしまう可能性もあり、丁度良かったようです。

確かに自閉症スペクトラム障がいをもつお子さんは、臨機応変に色々な場面に対応することは苦手ですが、
この様に一つずつ着実に対応策を身につけていくことは可能であることが分かりました。

私の研究に協力していただいたお子様、保護者様、本当にありがとうございました。

そして、この結果が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。