9Jul
皆様、こんばんは。
札幌市近郊恵庭市のカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の臨床心理士の足立直子です。
今日は以前に紹介したブログの中から、反響が大きかったものを再度掲載させていただきます。
脳科学者池谷裕二先生の著書「脳はなにげに不公平」から
サヴァン症候群についての記事です。
サヴァン症候群とは、知的障害、とくに自閉症の患者がときおり天才的な能力を発揮する現象です。
広義では、障碍にも関わらず、ある分野で他の分野より優れた力を持つ人を、そのように呼ぶこともあります。
またその能力を、「能力の孤島」とも呼びます
こちらの方が想像しやすいでしょうか。
ナディアという少女の例がなんといっても有名です。
ナディアは、3歳半の時、誰に教えられるわけでもなく、ペンを取り、絵を描き始めました。
それがこちらです。
お絵描きのレベルをはるかに超え、
デッサンを習った大人だけが描けるような精緻な描写ですね。
更にナディアは、本来ならば輪郭から描いていくところを、
脚やたてがみや馬具などのパーツをバラバラに描き始めて、
最後に線が揃って、躍動感あふれる馬の絵を、記憶だけを頼りに完成させたのだそうです。
ナディアは、
これほどの才能を発揮ふるにもかかわらず、実生活では8歳までまったく言葉が話せませんでした。
ナディアのようなサヴァン症候群の人たちが、
こうした優れた能力を発揮している時の脳の活動を測定すると、
通常発達の人とは異なる脳領域が活動していることが分かっています。
それに比べ、前部側頭葉(言語・概念を司る)の活動が低下していることが分かっています。
どうも前部側頭葉がカギを握っているようですね。
実際に、この脳部位に障害を負って、絵や音楽の才能に目覚める人がいます。
あるいは、野球ボールを頭部に受けて以降、驚異的な記憶力を発揮した10歳の少年の例もあります。
『言語が超人的な能力を発揮することを抑制しているのではないか』との記述があります。
たしかに、ナディアは、成長後に特別な教育を受け、多少の言葉を話せるようになりました。
すると、絵画の才能は消えてしまったのです。
私も学生時代、障害児教育の講義でナディアのことは知っていました。
他にも山下清さん(カメラアイ)や、映画レインマン等の例がありますね。
特別な能力は、なんらかの能力と引き換え(トレードオフ)の能力だと教わりました。
前部側頭葉(言語・概念を司る)が鍵を握っていたのですね。
最近の医療・科学の進歩がうかがわれますね。
私は学部生時代の4年間、知的障害(自閉症を含む)の人たちの余暇活動の運営に携わり、
障碍をもっている当事者さんや親御さんたちと多くの時間を過ごさせていただきました。
当事者さんたちや親御さんとお話する中で、他人がみたら驚く能力であっても、
日常の中ではなかなか利用し難い能力も多々あり、‘能力の孤島’には、複雑な思いがあります。
余暇活動の運営では、思い返してみても、
親御さんも当事者さんたちもユーモアいっぱいで、笑いのたえない会でした。
しかし会員の皆さんの障碍の程度は決して軽いものではありませんでした。
若い会員さんが死を迎えることもありました。
親御さんのしなやかな気持ちと優しさ、そしてユーモアに圧倒される4年間でした。
今、私は人生における良いお手本を頂いていたことに気付き、感謝しています。
障碍にたいする理解が深まり、障碍があっても、社会進出の機会が進むことを願っています。
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