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なおこ心理相談室BLOG 〜札幌近郊カウンセリングルーム〜

自閉症スペクトラム障害について

皆様、こんにちは。

札幌市近郊恵庭市にあるカウンセリングルームの「なおこ心理相談室 」の臨床心理士の足立直子です。

これから少しの間、以前にご紹介した記事を再掲載させていただきたいと思います。
今回は「自閉症スペクトラム障がい(アスペルガー障がいを含む)」について、お伝えしたいと思います。

今でこそ、テレビなどのメディアでアスペルガー障がいが取り上げられ、
知名度も高まり、支援体制も整いつつありますが、
私の学生時代には、まだまだ知名度も低く、支援体制も整っておりませんでした。

当時、私は大学院の修士課程で、
自閉症の治療と研究を専門とする児童精神科医の先生のもとで学んでおりました。
しかし自閉症スペクトラム障がい、
特に知的障がいのない高機能の人たちについての本はほとんど見つからず、
日本語の論文も少なく、英語の論文を読んでいた覚えがあります。

また当時、修士課程で学びながら、
非常勤で児童相談所にも勤めていたのですが、
療育手帳の取得を希望された保護者の皆様からのご相談も多くありました。
残念ながら当時の制度では、
知的障がいのないアスペルガー障がいの方々に療育手帳を出すことが出来ず、
「生活にはとても困っておいでなのに…」と苦い思いをした経験があります。

現在では、「精神障害者保健福祉手帳」をもつことが出来、支援にも繋がりやすくなりました。
これはひとえに親の会などの熱心な活動の成果だと思っております

 

さて、前置きが長くなってしまいました。

今回は「自閉症スペクトラム障がい(アスペルガー障がいを含む)」とは、どの様な特徴をもつか…、についてお伝えしたいと思います。

「自閉症スペクトラム障がい」とは、
カナーの提唱した自閉症(割合自閉度の高い中度・重度の自閉症)に、
アスペルガーがの提唱したアスペルガー障がい、
更にその周辺にあるどちらの定義も厳密には満たさない一群を加えた比較的広い概念です。

「スペクトラム」とは、「連続体」という意味で、
典型的な自閉症からアスペルガー障がい、そしてきわめて定型発達に近い状態、
重度の知的障がいをともなう例から、知的な遅れがない例まで、連続した一続きのものとみなします。

それら「自閉症スペクトラム障がい」の3大特徴を示しますね。

①社会性の障がい
②コミュニケーションの障がい
③想像力の障がい

では、もう少し詳しくみてみましょう。

①社会性の障がい
社会性の障がいとは、「他者との交流がスムーズにいかない状態」、と言ってよいでしょう。
ここで言う「他者」という言葉は注意が必要です。
特に知的障がいのない高機能の人の場合、家庭や教室のような慣れ親しんだ環境では、社会性の障がいが目立たないことが多いのです。
ですから、高機能の人の社会性の障がいは、
「構造化されていない状況」(昼休みや放課後)で、同年齢の子どもとの交流を注意深くみてみないといけません。

もちろん、自閉症スペクトラム障がいではなくても、
同年齢の子どもたちと上手く交流をもてない子どもも大勢います。

そこで大切なのが、
「発達早期から何らかの対人交流の障がいがある」という点です。
例えば、乳児期に母乳を吸うときに母親の顔や目をみていなかった、
人の顔よりも周囲の情景に関心があった、
一歳を過ぎても指さしをしなかった…、
お母さんと同じ物を見つめ、そして笑い合うような‘共同注視’がみられなかったなどの特徴がみられます。

②コミュニケーションの障がい
高機能の自閉症スペクトラム障がいの場合には、
ことばが無いということはありません。
知的障がいを伴う中度・重度の自閉症の場合には、
そもそも発語がなかったり、オウム返しやひとり言が中心だったりします。
それに対して、高機能の場合には、ことば数の問題よりも、「ことばの使い方の問題」となってあらわれます。

例えばアスペルガー障がいの人たちにおいては、
語用論的問題がみられます。
以下、説明しますね。

語用論とは、
電話口で「すみません、お母さんはいますか?」ときかれたとします。
その時に、定型発達の人は「この人は、お母さんとお話がしたいんだな」と瞬時に、
このメッセージを解釈します。
相手の方は、一言も「お母さんと話をしたい」と言わないにも関わらず、
相手の考えを推測するこの過程を語用論と呼びます。
アスペルガー症がいの人たちでは、この語用論の過程においても障害が見られることが分かっています。

さて、コミュニケーションの障がいを、更に詳しくみてみましょう。

●表現能力
高機能であっても、自閉症スペクトラムの人と話をする際には、
何らかの不自然さやぎこちなさを感じるはずです。
日常生活の中で、教科書のように正確すぎることば遣いをしたり、
細部にこだわった話し方をすることが多くみられます。
まるでアナウンサーのような模範的なしゃべり方をする子どももいます。

●言語理解
助詞や接続後が抜けたり、
「いく」「くる」、「そこ」「ここ」などの
視点によって表現の異なる語句の理解が難しいことがあります。
また言葉を字義どおりに解釈する傾向があるため、
たとえば「仕事が多くて縛られている」と言われて、
「どこに縄があるんですか?」と真顔で聞く、ということもみられます。
本人は真剣なのに、ふざけていると勘違いされて、行き違いになりがちになります。

●非言語的コミュニケーション
実際のコミュニケーションの場面では、
言葉だけではなく、身振り手振り、視線や表情、
話し手と受け手の間の距離など非言語的な要素も、
コミュニケーションに重要な役割を果たしています。

自閉症スペクトラム障がいの人たちは、この非言語的コミュニケーションに苦手さをもつ傾向があります。

表情や姿勢が単調だったり、不自然だったりすることが多く、
ことば以外の表現媒体を適切に用いることが不得意です。

われわれ定型発達の者が受ける「違和感」は、
このような非言語的コミュニケーションの方によってのことが多いのです。

③想像力の障がい
知的障がいのない高機能であっても、
自閉症スペクトラムの場合、
真の意味での想像力を発達させることが不得手です。

幼児期の特徴としては、「ごっこ遊びや想像的な遊びの乏しさ」という形であらわれます。
ミニカーを車に見立てることなく、一列に並べることに熱中したりする子どももいます。
しかし高機能の場合、ここまで明らかではない微妙な表現をとります。
発達心理学者の内田(1999)は、
想像力について「未来についての表象をもつことが想像力の働きのもっとも重要な側面である」と述べています。
この部分でのつまづきが、想像力の障がいとして現れてきます。
自閉症スペクトラムの子どものごっこ遊びは、
現実の単なるコピーであることが多く、感情を伴っていないような印象を受けます。
しかも多くの場合が「ひとり遊び」です。
例えば子ども同士のごっこ遊びの中でも、
柔軟に役割を交代したり、遊びのルールを改変することが出来ずに、
遊びが長続きしない場合が多くみられます。

また「想像力の障がい」は「こだわり」に直結します。
「こだわり」とは、「ある動作を反復したり、同一性を維持しようとする傾向」のことです。
例えばスーパーへの道順がいつもと違うと嫌がる、
とか、家具の配置が変わるとすぐに元通りにしようとしたりする姿がみられることもあります。

高機能の場合には、もっと微妙な形で「こだわり」がみられることがあります。
普段は目立たない「こだわり」の中に、「ルーチン(固定された習慣)」があります。
高機能の子どもの場合、
このルーチンの変更が必要になった時にはじめて、
「こだわり」の存在に気付く場合があります。
例えば、旅行に行くために、いつもよりも1時間早く起きる場面や、
テスト前のテスト勉強のためにいつもよりも寝る時間が遅くなった場合に、
「勉強が終わらない!」と泣き叫んだりすることがあります。
一言で言うと「融通がきかない」のです。

しかしこの「こだわり」には、プラスの面もあります。
プラスの面があらわれると、漢字・歴史・地理・恐竜・鉄道・天文学・コンピューター・設計・外国語などで、力を発揮することがあります。
「こだわり」が「反復練習が好き」という、プラス面になるのです。
以上が、自閉症スペクトラム障がい(アスペルガー障がいを含む)の大きな特徴です。

(以上は、「高機能自閉症 アスペルガー症候群入門」 正しい理解と対応のために 2002年 を参考にさせていただきました)

ここでは、苦手な面・マイナス面が強調されてしまっていますが、
この特徴を、得意分野でカバーしたり、プラス面に変えたりすることで、
暮らしやすさはぐっと上がります。

次回以降では、その支援についてお伝えしていきたいと思います。

全ての子どもが幸せに生きていける社会になりますように.

 

 

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