24May
札幌市近郊恵庭市の臨床心理士/公認心理によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
今日はADHDについて皆様と考えていきたいと思います。
ADHDは注意欠如多動症ともいいます。
不注意(集中力なく、注意が点々とする)、多動性(落ち着きなく、行動がせわしない)、衝動性(すぐに行動に移す傾向)の3つの特性を中心とした発達障害のことです。
日常での姿の現れ方としては以下のようなものがあります。
1)細やかな注意ができず、ケアレスミスをしやすい
2)注意を持続することが困難
3)上の空や注意散漫で、話をきちんと聞けないように見える
4)指示に従えず、宿題などの課題が果たせない
5)課題や活動を整理することができない
6)精神的努力の持続が必要な課題を嫌う
7)課題や活動に必要なものを忘れがちである
8)外部からの刺激で注意散漫となりやすい
9)日々の活動を忘れがちである
これらの不注意症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6カ月にわたって持続している
10)着席中に、手足をもじもじしたり、そわそわした動きをする
11)着席が期待されている場面で離籍する
12)不適切な状況で走り回ったりよじ登ったりする
13)静かに遊んだり余暇を過ごすことが出来ない
14)衝動に駆られて突き動かされるような感じがして、じっとしていることができない
15)しゃべりすぎる
16)質問が終わる前にうっかり答え始める
17)順番待ちが苦手である
18)他の人を邪魔したり、割り込んだりする
以上の多動性/衝動性の症状が6つ(17歳以上では5つ)以上あり、6カ月以上にわたって持続している
これが診断基準の一部です(全部ではありません)。
このような症状が7歳までに発見され、幼稚園や学校生活の様々な場面で、3つの特性からくる行動が確認されます。
このような症状をきたすADHDは男児の方が女児より多く、3~7%の有病率といわれており、決して稀な疾患ではありません。
小児期にADHDと診断された患者のうち約50%~70%は成人期に至っても症状が持続していると言われています。
ADHDの原因は脳機能の問題と言われています。
脳機能の中の自分の注意や行動をコントロールする脳の働き(実行機能)の偏りが関係していると考えられていますが、詳しいことはまだ分かっていません。
実行機能は前頭前野とよばれる大脳の前側の部分で調節されています。
ADHDの方は前頭前野を含む脳の働きに偏りがあると考えられています。
また脳の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きが不足気味であることが分かっています。
これらの神経伝達物質の機能が充分に発揮されないために、不注意や多動性があらわれるのではないかと考えられています。
このように脳機能の問題として立ち現れるADHDですが、
難しいのが乳幼児期~幼児期に虐待を受けたお子さんの場合にも似たような症状があらわれる場合があるというケースです。
虐待を受けたお子さんとの違いはその対応(セラピー)に現れます。
虐待を受けたお子さんの場合は療育やSSTよりもまずプレイセラピーが必要になってくると思われます。
そのためその子どもの養育環境をしっかり把握しなければなりません。
ADHDは脳機能の問題なので、治療薬もありますが、治療薬を飲めば困難がなくなるわけではありません。
治療薬を飲みながら(飲まずに済む場合も多数あります)、環境調整をし、個々の困難点に対して、対策を練ることが重要になります。
ADHDの治療薬は注意欠如多動症治療剤(選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤)と中枢神経刺激剤の2剤です。
これらの薬剤はノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善し、これにより情報伝達がスムーズに行われるようになり、ADHD症状を改善すると考えられています。
吐き気や食欲減退などの副作用もありますが、お薬が身体に慣れてきたら、副作用は軽減すると考えられています。
このような治療薬を飲みながら(または飲まずとしても)、療育、SSTが必要になってきます。
まず個人個人の問題となっている行動を特定して、なぜ困難が生じているのか、どんな困難なのか、それによってどんなことが生じているか…などを多角的に見てみます。
そしてどの様な対策がとれるか、それによってどんな点が改善されるかを探っていきます。
できれば特定された行動を1カ月くらい追ってみて、きちんと対策がとれているか、どのように状況が改善していったのかを分析していきます。
(これは後の治療戦略の助けになるものと思われます)
当相談室でもお子さんの療育、SSTは承っており、多数のお子さんがその持てる力を日常で発揮されております。
ADHDという病気について知ることもその一つです。
病気について知識を得て、自分のどこがどのように問題なのかを認識します。
もしかすると自分では気づいていない点も見つかってくるかもしれません。
そのことで自己認識がすすみ、よりよい対策が編み出されてくるものと思われます。
環境調整も重要になってきます。
学齢期のお子さんの場合、隣の席の子との間に敷居を作ってあげることで、注意集中が保たれやすくなります。
学級の張り紙も少なくすることで、気が散りにくくなります。
もし失敗しても叱責するのではなく、解決策を教えてあげる方がよい場合が多くあるので、学校の先生にその点を知っておいてもらうとよいでしょう。
そのため学校の先生と話し合って、協力してもらう必要があります。
ADHDの治療は、個人、家族、周りの環境が一体となって、初めて成立します。
そのためにもADHDについてまず知ることが重要になってくるでしょう。
個人、家族はADHDについて学び、周囲の人に教えてあげてください。
そのようにして理解の輪が広がることを願っています。
なおこ心理相談室
臨床心理士/公認心理師 足立直子
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