16Jun
札幌市近郊恵庭市の臨床心理士公認心理師によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
今日はある女性の例から自信を回復するプロセスを皆様とみていきたいと思います。
(個人が特定されないように、加工しております。事例掲載はご本人の了承を得ております。)
この女性の最初の主訴は「発達障害ではないか」とのことでした。
当相談室でWAIS-Ⅲを実施し、調べてみましたが、その結果やこの女性の雰囲気からしても、どうも発達障害の感じはありませんでした。
しかし彼女はやはり発達障害の疑いを捨てきれないご様子でした。
彼女へは、療育的関わりやSSTよりもカウンセリングで自分を深めていく方が向いていると考え、支持的カウンセリングを実施しました。
彼女は仕事への不適応が続いたことから、自分に自信を失い、仕事から離れ、家で自分のライフワーク(芸術的活動)に取り組む生活でした。
カウンセリングでは、彼女が作った作品を一緒に味わったり、これからどう芸術的活動をしていこうか、と一緒に考えたりしました。
一見すると生産性のない会話ですが、彼女は目を輝かせて、芸術活動の未来を語りました。
そうこうしているうちに、彼女は芸術的活動も続けたいが、そのためにお金をかせぎたいと語るようになりました。
家庭環境から英語ができる能力をお持ちだったので、知り合いから通訳の仕事などを紹介してもらいましたが、なかなか仕事にはつながりませんでした。
彼女の中で芸術的活動をしながら仕事をしたいという気持ちがあったので、仕事であれば何でもいい、という訳にはいきませんでした。
そんな中彼女は水彩画教室に通い始めました。
50代~60代の生徒がほとんどだったようですが、その中で可愛がってもらいながら、彼女も熱心に水彩画に取り組みました。
そして水彩画教室の先生もまた、今の地位にこられるまでには、経済と芸術の両立に苦労されたことを聞いたりもしたようです。
こうして彼女は芸術的活動を深めながらも、より仕事に目を向けるようになりました。
そんな時に知り合いから仕事を紹介されました。
その仕事は彼女の大事にしている芸術的活動にもかかわる仕事で、得意の英語を使った仕事でもありました。
彼女は大いに悩みましたが、この仕事につく決心をしました。
私とのカウンセリングはここで終了しました。
その後、数か月後に彼女から元気に活躍している旨のメールをいただきました。
彼女は仕事への不適応から自信を失い、自分の能力へも疑問を抱き、発達障害を疑ったのだと思います。
ここで発達障害とみなして、療育的関わりやSSTをすることは、少し違うと思われました。
彼女自身も自分の話をすることで、心を深めていくことを求めていましたので、
療育的関わりやSSTよりも支持的心理療法を実施しました。
彼女は一見すると、水彩画教室に通ったり、と芸術的活動によりはまっていったようにみえましたが、
その一方でしっかりと仕事にも目を向けていたのです。
芸術的活動から心のエネルギーを受けながら、仕事に目を向けていったと考えることもできます。
そして機が熟した時に、彼女が適任の仕事が舞い込んできたのです。
このように元気で活躍しているお便りが届くことは、カウンセラーとしてとても嬉しいことです。
その人がその人らしく生きる手助けができるように、日々精進していきたいと思います。
なおこ心理相談室
臨床心理士/公認心理師 足立直子
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