7Apr
皆様、こんばんは。
札幌市近郊恵庭市の臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
こちら恵庭は、最近は風が強かったり、気温が低かったりで、
春まではまだまだ…という雰囲気です。
本州では桜の便りがありますね。
こちらはゴールデンウイーク頃に咲くでしょうか。
今から楽しみです。
さて、先日、日本心理臨床学会から「心理臨床の広場」という冊子が届きました。
その中で、ネット・SNS時代における心理臨床の在り方をテーマにしたお話がいくつかありました。
そのお話を読んで、私なりに考えたところをお伝えしたいと思います。
私は現在39歳です。
高校生の頃にポケットベルが流行り、大学生になったら携帯電話が流行り、大学3年生くらいからネット・メールが浸透していった時代に生きてきました。
私は、高校生の頃のポケットベルには興味がなく、大学生になった時に携帯電話も率先して持とうとは思わない学生でした。
大学時代の友達に「なおちゃんが携帯電話をもたないと、周りが困るんだよ」と言われて、
「そうなのか!」とハッとして、携帯電話をもつに至りました。
そんな私なので、もしかするとネットやSNSに関しては保守的な考えをもっているかもしれません。
ネット・SNSは様々な年代で「繋がり」をもちやすい点や、「自由な発信力」(岩倉、2019)をもてる点でメリットも多く、私たちの現代の生活の中で、とても重要な役割を担っているといえるでしょう。
一方で、SNSで「死にたい」などと書き込んだ若い男女9人が殺害されるという悲惨な事件が起こったり、
見知らぬ相手と実際に会って、性的被害を受けたり…とネット・SNSは闇も包含しているといえます。
岩宮(2019)は、思春期とSNSについて、「瞬間を切り取る刹那感は、思春期心性にほうとうにフィットします」とする一方で、「ネット端末が常に手元にあって、思いついたらすぐに発信できてしまう状況は、思春期とは相性がよくないのです」としています。
思春期と相性がよくない、というのは、思春期が「先のことを考えて今の自分の言動を律することができにくい時期」であり、それだからこそ「心を育むためには、誰とも交流しないひとりだけの時間がどうしても必要」な時期であるからです。
誰とも交流しない中で、自分と対話したり、相手を「待つ」時間を耐えたり、「待った」ことにより更なる喜びに出会ったり…そういった体験がネット・SNSで奪われてしまう可能性があります。
一方で、いのちの電話のある支部では、30歳未満の相談は1980年代初頭では半分近くを占めていたのに、2016年には1割を割り込むまでに大きく低下している、という現状があります(杉原、2019)。
若者の通信手段は電話からネット・SNSに大きく変わってきているのです。
このネット・SNSという通信手段をカウンセリングにも利用していこうという考え方もあります。
このメリットとしては問題の早期発見、深刻化の予防、敷居が低くなること、自己開示が促進されることなどがあるでしょう。
一方で表情が伝わらないことで、言葉以外のノンバーバルなコミュニケーションが出来にくい点がデメリットと言えます。
また先ほどのお話とつながりますが、いつでも出来るネット・SNSでは、「待つ」ことでのメリット(カウンセリングまでの時間を待つことでの心の成長、カウンセリングの中の時間を守ることでの自我の強化)が育まれにくいというデメリットがあるようにも思います。
若者がネット・SNSにはまり込んでいき、現実生活に支障をきたす時に、心理臨床家・カウンセラーとしてどのように支援できるか…、今後の大きな課題になると思います。
<参考文献>
岩宮恵子(2019)SNSの闇 心理臨床の広場
岩倉拓(2019)心理臨床のいま 心理臨床の広場
杉原保史(2019)SNSカウンセリングーLINEなどを用いたモバイル心理支援 心理臨床の広場
山崎孝明(2019)ネット時代の心理臨床 心理臨床の広場
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