16Oct
札幌市・恵庭市・千歳市・苫小牧市・北広島市・江別市の公認心理師/臨床心理士によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
昨今、子どもをとりまく環境について一昔前よりも世間にとりあげられることが多い印象です。
少子化や核家族化が要因かもしれませんし、日本という国が豊かになり、より子どもに目が向くようになったのかもしれません。
(一昔前までは、子どもは‘小さい大人’として労働に使われていたという歴史があります)
中でも子どもも保護者も共に大きく揺れる思春期については悩みがつきものでしょう。
今回はそんな思春期について心理学的に考えてみます。
子どもが大人になるプロセスは、時期ごとに区切ることは難しいですが、今回は以下のように区切って考えてみます。
思春期前半 13歳~15歳(中学生)
思春期後半 16歳~18歳(高校生)
通底するテーマ:アイデンティティの確立をめぐるテーマ
⇒○「自分はこういう人間なんだということを知ること」
例)自分がわかる、自分自身を客観的な目で見られるということ
○「自分が他人にどう見られているかを意識すること」
→公的自己意識が高まる
思春期の一歩手前の学童期(児童期 小学生時代)までは何事も主観的に考え、人が自分をどう見るなんて気にしないのが普通で、自分は、自分が考えるイメージ通りの人間だと思っています。
それが自分は思った通りの人間ではないと気が付きだし、友人など周りの反応を見ながら自己認識・自己洞察が出来るようになってきて、客観的に自分が見えてくるようになってくるのです。
学童期まではたくさんの友だちと交わり、さまざまなものを共有し合うことが必要で、その経験が、思春期・青年期のテーマを確立する土台になります。
○友人関係
不特定の友人の中から価値観や主義、信条の合う仲間や親友を作り、その仲間や尊敬出来る先生との関係を自分を映す鏡とします。
その中で、自分がどのような人間かを見出していくようになります。
自分がどのような人間かを知るということは、自分の価値、能力、長所を知ることでもあり、欠点、短所、弱点を知っていくことでもあります。
その中で、自分の適正が自覚できるようになり、自分の社会的役割が見えてきます。
そういう経験が土台になり、アイデンティティが確立されていきます。
○保護者との関係
思春期・青年期には、‘親離れ’をしていきます。
それは親から完全に離れるというものではなく、距離が遠くはなれるが適切な距離を保つことが大切です。
親との距離を適度に取って、仲間たちの付き合いのなかで自分を見出していくことが望まれます。
このプロセスが安定した20代を迎える土台になります。
同一化から同一性へのプロセス
~学童期(児童期)から思春期・青年期へ~
学童期(児童期)までは、学校の先生や、家族や周囲の人たちを理想の人物として同一化し、模倣していました。
しかし思春期になると、その人の欠点や、その人と違う自分に気付くようになり、理想と失望など様々な心的経験をします。
その中で、本当の「自分とは何者か」「自分は何をやりたいか」が見えてくると考えられています。
他人の影響から脱して自分が自分の主人公になっていくこと、これを同一化から同一性へのプロセスといいます。
これは、自分で自分を作っていこうとする心の動きであり、決定したことの責任は自分で負うという孤独を味わうことを意味し、多くのエネルギーを必要とします。
子ども(もはや大人と呼べるかもしれません)は、このプロセスの中で、「自分が何であるか」「自分の社会の中での位置づけ」「思想的信念や価値観」を獲得していきます。
このプロセスで充分に自己が確立されないと、アパシーやモラトリアム、引きこもりなどの課題に立ち向かうことになると言われています。
これらの課題を考えていくと、思春期・青年期だけの躓きだけでなく、乳幼児期の愛着関係の形成の失敗、学童期(児童期)に友達と十分交流出来なかったという成育歴が浮かび上がってくることもあります。
臨床心理学者の河合隼雄先生は、悩み多き思春期は、大人になるための「さなぎの時期」と喩えておられます。
充分エサを食べ、動き回った幼虫は、一見すると静止しているように見える「さなぎの時期」に入ります。
この時期は外からは動いていないように見えますが、内部ではたいへんな変化が生じています。
そしてこの「さなぎの時期」を達成すると、見事な蝶になるのです。
子どもたちが、それぞれの美しさのある蝶になれるように大人は環境を整えてあげたいですね。
そしてもし、この「さなぎの時期」をうまく達成できなく、課題に立ち向かっていても、それもその後に蝶になるための、大切な経験だと思います。
より個性的な美しさをもつ蝶になれますよう、お祈りいたします。
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なおこ心理相談室
公認心理師/臨床心理士 足立直子
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