2Jun
札幌市近郊恵庭市の臨床心理士/公認心理師によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
今日はうつ病について、皆様と考えていきたいと思います。
うつ病とはどんな疾患なのでしょうか。
DSM-5(アメリカ精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル)によると以下のような状態をうつ病と呼んでいます。
1)ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
2)ほとんど1日中、ほとんど毎日の、興味、喜びの著しい減退
3)著しい体重変化、またはほとんど毎日の食欲の減退・増加
4)ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
5)ほとんど毎日の精神運動性の焦燥・制止
6)ほとんど毎日の疲労感・気力減退
7)ほとんど毎日の無価値観、罪責感
8)ほとんど毎日認められる思考力や集中力の減退、決断困難
9)死についての反復思考、反復的な自殺念慮、自殺企図、自殺するためのはっきりとした計画
以上の症状のうち5つ以上が2週間みられた場合にうつ病という、とされています。
1日中ふさぎこんで、涙もろくなり、身体は重たく動くのがおっくうになり、日常生活に支障が出る…という感じです。
またうつ病には日内変動といって、朝に症状が重たく、夕方になると楽になる、という状態がみられます。
うつ病がみられた場合はカウンセリングだけではなく、メンタルクリニックへ受診する必要が出てきます。
薬物療法とカウンセリングの組み合わせで、より早くうつ病が癒えていき、再発しにくくなるのです。
このうつ病は大人だけでなく子どもにもみられます。
小児で2%、思春期で4~8%うつ病が生じると言われており、決して稀ではありません。
子どものうつ病と大人のうつ病の違いは、その症状にも現れます。
大人では抑うつ気分が出てきますが、子どもの場合はしばしばイライラが中心の症状となることがあります。
大人の場合と異なり、周囲のことに無関心になるというのではなく、些細なことに反応しやすく、過敏であったり、反応しやすいことがみられます。
また自殺行動が大人より多くみられるので注意が必要です。
そして子どもでは不眠ではなく、過眠、食べられないではなく、過食がみられることもあります。
いじめ自殺が取り沙汰されておりますが、
自殺する子どもたちは実はうつ病になっていたのではないか…、とも思います。
周囲に心配かけまいとして、症状があっても我慢して明るく振舞う子もいます。
誰かがそのSOSに気付くことが大切になってくると思います。
発達障害をもつ子どもにも併存してうつ病が生じることがあります。
なかなか周囲になじめなかったり、叱られることが多いと、自尊心が低下して、うつ病になることがあります。
大人が注意して見守ってあげることが大切になってくると思います。
当相談室にも大人でも子どもでも発達障害に併存してうつ病を発症したケースが多くみられます。
この場合、うつ病の治療をするのはもちろんですが、併存する発達障害に対する対処を考えることが重要になります。
環境調整をして、本人が生活しやすくなるように工夫したり、療育で行動を見直したり、否定的な考えを修正できるようにお手伝いしたりしていきます。
そうすることで、再発を防ぎ、発達障害をもっていても、それを個性として発揮できるようにします。
子どもへの薬物療法の適応は、さまざまな議論があり、一致していない現状です。
海外では、抗うつ薬による治療の前に必ず精神療法を数週間行うことを推奨しているところもあります。
一方で中等度から重症のうつ病に関してはすぐに抗うつ薬を処方することも推奨しているところもあります。
このように様々な議論が生まれることの背景には、子どもの場合、SSRI(抗うつ薬の一種)を使うと、攻撃性や衝動性、自殺企図などが高まる事例がみられる、ということがあります。
ですので、SSRIを飲み始めた時は周りの大人は注意して様子をみてあげる必要があります。
このように大人でも子どもでもうつ病になることは、決して稀なことではなく、日々のケアが重要になってきます
ストレス発散の趣味を多くもち、仕事に打ち込んだ後には運動をするなどリフレッシュする機会をもつことが大切になってきます。
それでもうつ病になることがありますが、どうぞ自分が弱いからうつ病になったと思わないでください。
どんな強い人でもうつ病になる可能性はあります。
うつ病になったら、周囲にSOSを出し、環境を整え、治療を受けてください。
当相談室でもよりよいケアを行うために、様々な工夫をしています。
うつ病を未然に防げる、うつ病になったらすみやかに治療に入れるような社会になりますように。
なおこ心理相談室
臨床心理士/公認心理師 足立直子
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