22Jun
札幌市近郊恵庭市の臨床心理士/公認心理師によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
今日は境界性パーソナリティー障害について、皆様と考えていきたいと思います。
皆様は境界性パーソナリティー障害という診断名を聞いたことがおありでしょうか。
様々なパーソナリティー障害がある中で、割合有名な診断名であると思われます。
もしかすると皆様の周りにも、このような方々がいるかもしれません。
DSM-5で境界性パーソナリティー障害をみてみましょう。
1)見捨てられる体験を避けようとする懸命の努力
2)理想化と過小評価との両極端を揺れ動く不安定な対人関係
3)同一性障害(自己像や自己感覚の不安定さ)
4)衝動性によって自己を傷つける可能性のある、浪費薬物常用といった行動
5)自殺の脅かし、自傷行為の繰り返し
6)著明な感情的な不安定さ
7)慢性的な空虚感、退屈
8)不適切で激しい怒り
9)一過性の妄想的念慮もしくは重症の解離症状
境界性パーソナリティー障害では、上記の診断基準が5つ以上であると、診断の条件を満たすことになります。
では、境界性パーソナリティー障害が発症する原因にはどのようなものがあるでしょうか。
これは難しい問題で、人によって原因は異なりますし、家庭環境や生活習慣などでも変わってきます。
1)生まれつきの気質・遺伝的要因
もともと、生まれた時からその人固有の気質があるものと言われています。
気質はパーソナリティーの基礎となるもので、遺伝的な要因が関わっていると考えられますが、
パーソナリティー障害と遺伝については研究途上であるため、分からないことも多くある状態です。
2)成育環境・家族とのかかわり方
成育環境や家族関係などによって、パーソナリティーの形成自体に大きな影響があると言われています。
育った環境によって、物事の捉え方も人それぞれ異なっていきます。
またこれらの生育環境は、気質とも深いつながりがあります。
3)社会的要因(時代背景・社会の状況や価値観・社会生活における経験など)
成長するに従い、人は社会に出て、コミュニティに属しながら、社会生活を営むようになります。
その中で、様々な経験を通し、パーソナリティが形成されていきます。
その社会生活の中で、パーソナリティの偏りが起きる要因として特に大きな影響を及ぼすのは、
虐待、犯罪被害、事故や病気、災害などの経験と言われています。
またパーソナリティ障害の背景に発達障害が隠れていることもあります。
コミュニケーションが上手くとれない、人間関係がうまく築けないことにより、自身を否定的にとらえてしまうような経験が、パーソナリティの形成に影響を及ぼすと言われています。
それ以外にもSNSの流通などの時代や社会の価値観の変化によって、以前は問題にならなかったことが、課題視されるということもあります。
では境界性パーソナリティー障害の治療についてみてみましょう。
境界性パーソナリティー障害の治療では、大きく薬物療法と精神療法に分けられます。
薬物療法では抗うつ薬や抗不安薬が用いられることが多いと言えます。
しかし薬物療法だけで境界性パーソナリティー障害が改善するというのは、難しい問題といえます。
薬物療法に加え、精神療法が大きな柱となります。
患者さんの気持ちを受け入れ、共感しつつも、現実検討を促しながら、現実をみつめていくことができるように促します。
この道程は長く険しいものになると思われますが、投げ出さないで根気よく続けることが大事になります。
当相談室でもパーソナリティー障害をお持ちのクライエントさんを多くみております。
一つのところに長くかかるメリットとして、その人のペースをカウンセラーが知ることができ、カウンセラー自身がその多彩な症状をつかむことができるようになり、結果、カウンセリングが混乱せず、スムーズに進展するようになります。
では周囲の人はどのようにサポートすればいいでしょうか?
特別に構える必要はありません。
過剰な反応が見られるときには、刺激にならないようにする、調子が悪い時にはいたわりの気持ちで接する、かかわりを求めている時には、負担にならない範囲で関わる、といった風です。
この‘負担にならない範囲で’というのは非常に重要です。
特にご家族でしたら、患者さんと24時間ずっと関わることになります。
ここで無理をすると、周囲の方々の生活・人生が重荷になってしまうことでしょう。
患者さんには‘負担にならない範囲で’思いやりをもって接して差し上げてほしいと思います。
しかしこの‘負担にならない範囲で’というのも、難しい問題でもあります。
‘負担にならない範囲’を知ることは、自分が患者さんを受け入れられる範囲を知り、患者さんのペースを知ることで、出来上がっていくものと思われます。
その道のりは長く、時に険しいものになるかもしれません。
ですので周囲の人は、ぜひ専門家(精神科医や臨床心理士/公認心理師)に意見を求めてください。
周囲の人がカウンセリングを受けて、患者さんのことを知り、自身の心を癒すことも大事なことです。
とにもかくにも長期戦になる、ということを心しておきましょう。
境界性パーソナリティー障害の患者さんやそのご家族が心穏やかに過ごせますように。
なおこ心理相談室
臨床心理士/公認心理師 足立直子
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