17Dec
皆様、こんにちは。
札幌市近郊恵庭市のカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の臨床心理士の足立直子です。
12月も半ばになりました。
後半月で今年も終わりを迎えますね。
クリスマスも近くなり、街はキレイに彩られていますね。
こちら北海道は道路がツルツルです。
ケガをしないように、気をつけましょうね。
今日はギャンブル依存症の脳機能についてみてみましょう。
出典は、先日ご紹介しましたギャンブル依存症の第一人者・精神科医田辺等先生のご著書「ギャンブル依存症」です。
田辺等先生がお勤めの北海道精神保健福祉センターでは、年間300~350件ほどの新規相談があり、
そのうち10~15%はギャンブルに関わる相談だといいます。
毎年40~50件の相談に当たるとのことです。
これを多いとみるか、少ないとみるか。
きっと相談につながっていないギャンブル依存症の方々がたくさんいることを考えると、
これは氷山の一角なのでは、と思っています。
興味深い研究をみてみましょう。
東京理科大学諏訪短期大学の篠原菊紀先生は、安静時・パチンコをしている時・フィーバーしている時、それぞれの血液中の快感物質を測定するという研究を発表されています。
その結果、パチンコをしている最中には、βエンドルフィンという、いわゆる`脳内麻薬’の血中濃度が高いことが示されました。
詳しく説明すると、欲求が満たされたと感じたとき、脳内では、βエンドルフィンが中脳腹側被蓋野のμ受容体に作動し、GABA神経を抑制させます。
これにより、中脳腹側被蓋野から出ている、A10神経のドーパミン遊離を促進させます。
そして、多くのドーパミンが放出され た結果、「多幸感」がもたらされるのです。
これがフィーバーになった時の、「やった!」という感覚ですね。
あの感覚は、脳の中にあるA10神経群から放出される「ドーパミン」によってもたらされています。
この神経回路は「報酬系」と呼ばれ、欲求が満たされた時に活性化され、我々に快感をもたらします。
また報酬系は、実際に満たされる場合ではなくても、満たされるであろうという「期待感」に対しても活性化されます。
これがギャンブルにハマってしまう、原因のひとつにもなっているのです。
フィーバーしている時だけでなく、
フィーバーするかもしれないとドキドキワクワクしている時にも報酬系は活性化されるのです。
またベータ・エンドルフィンというのは、そもそもモルヒネに似た作用がある脳内物質です。
長距離ランナーなどが体験しているランナーズ・ハイも、競技中の苦痛がベータ・エンドルフィンを誘発し、その効果で苦痛が減じて快感に変わると理論づけられています。
ランナーズ・ハイでしたら、皆さまもご経験がおありかもしれません。
その様な脳内の変化があることが示されたのは、意義深いことと思います。
この点からも、やはりギャンブル依存症は病気であるといえると思います。
もちろんギャンブルはアルコールやモルヒネ、覚せい剤のように直接脳に働きかけるわけではありません。
しかしギャンブルで勝つために細心の注意を払い、工夫し、エネルギーを注ぎ、しばらくは負けの連続で気持ちが落ち込み、ふと勝てそうな気がして急激にドキドキワクワクし、そしてついに勝利する。
このような一連の背筋を走り抜けるような快感を経験する時、脳内では、何らかの脳内麻薬系の物質が出ていると考えることもできます。
よく漫画に出てくるパチンコ好きの人が、パチンコ台に向かう時に、目がメラメラと燃えていることを思い出します。
目は脳のソフトサインと考えると、頷ける描写です。
米国の最もポピュラーな精神医学教科書のハロルド・カプランのテキストでも、
薬物以外の物への嗜癖(ギャンブルや食べること)に、薬物嗜癖と共通の何らかの神経化学的な基盤があるという可能性や、
さまざまな嗜癖行動が、脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)・青班核(せいはんかく)・側座核(そくざかく)など報酬領域の活動に同じような作用を及ぼしている可能性に言及しています。
まだまだギャンブル依存症を脳機能からみる分野は進んではいません。
これからもっと新たな知見が示され、治療が進みますようお祈りいたします。
次回は、ギャンブル依存症の治療/自助グループについてみていきたいと思います。
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