31Aug
札幌市・恵庭市・千歳市・苫小牧市・北広島市・江別市の公認心理師/臨床心理士によるカウンセリングルーム「なおこ心理相談室」の足立直子です。
さて、今回は「思春期のうつ病」について、皆様と考えてみたいと思います。
思春期のうつ病の有病率は、2.0%~8.0%と言われています(6か月有病率)。
児童期よりも増え、大人と同じような割合になってきます。
そして男性に比べ、女性の割合が高くなってくるのが特徴的です(男女比1:2)。
基本症状は大人に準拠し、DSM-Ⅴ(アメリカ精神医学会の診断基準)を参考にすると以下のようになります。
以下の症状のうち5つ (またはそれ以上) が同一の2週間に存在し、病前の機能からの変化を起している
これらの症状のうち少なくとも1つは、
①抑うつ気分または
② 興味または喜びの喪失
である。
1. ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
注: 小児や青年ではいらいらした気分もありえます。
2. 興味、喜びの著しい減退
3. 著しい体重減少、あるいは体重増加 (例えば、1ヶ月に5%以上の体重変化)
またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加。
(注: 小児の場合、期待される体重増加が見られないことも考慮)
4. 不眠または睡眠過多。
5. 焦燥または制止 (落ち着きがない または のろくなったという感覚)。
6. ほとんど毎日の易疲労性(疲れやすさ)、または気力の減退。
7. 無価値観、または過剰あるいは不適切な罪責感
8. 思考力や集中力の減退、または決断困難
9. 死についての反復思考 (死の恐怖だけではない)、特別な計画はない反復的な自殺念慮、自殺企図、または自殺するためのはっきりとした計画がみられる
以上を参考にしながら、思春期の場合に考慮したいこととして
①抑うつ気分が前面に出ずに、イライラすることが多くみられる
②抑うつ気分が身体の症状で表れることが頻繁にみられる
③不登校になることもある
ということが考えられますが、これはまだ言葉が育っていないために、言葉での表現の代わりに生じている可能性があります。
また
・行為障害
・ADHD(注意欠陥多動性障がい)
・不安障害
・摂食障害
以上の障害にうつ病が併存することが高い割合でみられることにも注意したいところです。
また現時点ではうつ病性障害を示していても、潜在性双極性障害が存在することもあるので、長期のスパンで様子をみて、治療を受ける必要もあります。
思春期のうつ病は「治りやすいが繰り返しやすい」という特徴があります。
そのため早期に治療を始めることが重要になってきます。
大人のように言葉で心情を伝えることが不得手であるため、大人が様子を注意深く感じ取ることが大切になってきます。
治療は薬物療法・精神療法のほかに、心理教育的アプローチ・家族へのアプローチ・学校との連携が考えられますが、
ご家庭では以下のことに気を付けてあげたらよいでしょう。
①休養が不可欠
②叱咤激励はしない
③焦らない
④重大な決定はうつ病が回復するまで保留すること
⑤決して自傷や自殺をしないこと
思春期は心も身体も大きく変化・成長する時期です。充実した思春期を送れますよう、心からお祈り申し上げます。
なおこ心理相談室
公認心理師/臨床心理士 足立直子
関連記事
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。